STORY
すっと伸びたグリーンの葉の合間に見える、楚々としたベル型の花が可憐なスズラン。フランスでは「ミュゲ」と呼ばれ、幸せのシンボルとされており、部屋に飾るほか、親しい人や愛する人に贈って楽しむ風習があります。日本の切り花スズランの約8割のシェアを占めるのが、「JAながのみゆき」さんです。信州の山々に囲まれた美しい地で、スズランのほか、芍薬、ヒペリカム、ワレモコウ、シンフォリカルポスなど多品目の花を育てています。「みゆき」は「深雪」「美雪」とも漢字を当てることができ、その名の通り、冬季は標高の高い土地では3m以上の雪が降り積もります。
スズランの栽培は非常に手間がかかるため、鉢、切り花ともに栽培を行っているのはここ長野県のほか、北海道と新潟の一部の産地のみ。加えて、その数は年々減少していると言われています。その苦労を、スズラン研究会長の梨元さんが解説してくださいました。
「栽培は『葉芽』と呼ばれる地下茎についた小さな芽を畑に植えるところからはじまります。そこから2~3年をかけて苗を育て、再度畑から掘り上げて、葉芽と花をきちんとつけてくれる『花芽』をより分ける作業を行います。この花芽を作り出すのがまず一苦労。選別はすべて目視かつ手作業です」
選別された花芽は-2°Cで 2か月間冷蔵・休眠打破処理され、12~4月にかけて温室で促成栽培されます。また、花をつけない葉芽については、温湯消毒して4月に露地の畑に植えられ、再度2~3年、苗養成されます。かかる時間と手間が膨大なだけに、よい花ができたときの栽培の喜びもひとしおだと笑顔で語ります。
「様々な花を栽培していますが、スズランについては本当に思い通りに行かず、何度辞めようと思ったことか(笑)。でも、苦労しただけに深い愛着もあります。この花に強い思い入れを持ったお客様の声やスズランにまつわるお客様のエピソードを聞くと、それがモチベーションにつながるんです」
梨元さんも愛するその花言葉は「幸福の再来」。小さな花が経てきた歳月に思いを馳せれば、純白の花は、私たちにさらなる幸せを届けてくれます。